ハンセン病からみた日本「隔離という病い」

a2c_sato2005-05-09

 連休中に買ってたのを読了。
 「隔離という病 近代日本の医療空間」(武田徹・中公文庫)
 http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31481461
 氏は東京大学先端科学技術センター教授。メディア論に詳しく、本作は1997年に書かれたものの加筆修正。

 過去に「癩病」とよばれた「ハンセン病」。発症すると神経が冒され皮膚症状が現れ、外形に変化を及ぼすところから、患者は差別や偏見の目にさらされた。現在では特効薬も開発され、不治の病ではなくなったが、当時は治療法も確立しておらず病原菌も発見されていなかったため、今で言えばエイズのような不治の病とされた。いわゆる「らい予防法」によって、1900年代より患者の隔離政策がとられた。感染経路についてもまだ発見されていなかったために、隔離された患者は子どもを作る事を禁じられた。
 戦後になって、海外で治療薬が開発され遺伝病でないことが認識されていたにもかかわらず、日本のハンセン病患者の隔離政策は続けられ、ようやく1996年に「らい予防法」は廃止された。

 この書はハンセン病をめぐるルポタージュにとどまらず、そこから日本人の意識構造に批評が及ぶ。確かにハンセン病の隔離政策は強制的であり人権蹂躙であったが、らい予防法の廃止で「かわいそうな人たちがいたのですね」と言うだけでは、問題は何も解決していないし、そこに武田氏は特有の「ヒステリー」を発見する。
 その他にもこれらハンセン病の隔離政策を通じて「牧人論」「生きがい」「ユートピア論」をキーワードに語っていく。
 結論的には、群馬県草津で見た都市共同体を一つの事例として見る。無名時代の横山秀夫も登場。

 最近の氏の著作を読んだ事のある人ならわかるだろうけど、確かにテーマとは離れた「危うさ」があって、読んでてヒヤヒヤさせられますよ。それはあとがきでも本人が書いているてんだから新鮮。