消費税総額表示の、財務省と出版業界の仁義なき戦い。

 そうそう、4月1日に書いたきり忘れてましたよ「消費税総額表示」の話。
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/sougakuhyoji/sougakuhyoji.htm

 本・雑誌は「再販制度商品」であり、全国一律公平に文化を享受する目的のために、出版社が出版物の価格を決め、書店ではその価格を変えて売ってはいけない、という法律があるのだ。であるので本の価格は本に印刷されなければならないのです。
 最初の変化が起こったのが、消費税3%のスタート。従来は「価格○○○○円」と表示していたものを、「税込○○○○円(本体●●●●円)」と記載するようになったのだ。ところがこれが問題発生の第一歩。

 この表記は1997年に消費税率が3%から5%変わった時に対応できなかったのだ。↑の表示は税率上昇を考慮していなかったため、本に書いてある価格はすべて3%の金額を表示してしまっており、出版社は市場に出てしまった本の価格表示をすべて変えなければいけなくなってしまったのだ。カバーをかけ替えたり、値段をシール貼りするなど、莫大なコストがかかってしまったことは言うまでもない。
 それ以来、表示は将来の税率の変化にも対応できるように、「定価(本体○○○○円+税)」と税込金額を明記しない表示になって落ち着きました。

 ・・・と思いきや、こんどは「商品を税込金額で表示せよ」との話。要するに「定価(本体○○○○円+税)」は総額表示じゃないからダメー、ということなのだ。
 税率改正で痛い目に遭っている出版業界は、「過去にこういうことがあったんだから別対応させてくれ」ということになり、結果「スリップ」に表示を入れる、という苦肉の策で決着しました。

 「スリップ」って何ぞや?という方も多いと思いますけど、アレですよ。本に挟まっていて、本屋で買うとレジでシュッと抜くやつ。アレは単なるしおりではなく、書店のアナログ販売記録であり、レジ対応していないお店はスリップで売上管理をしているのだ。
 そのスリップの頭についているツマミみたいな小さなスペースに(業界用語では「ボウズ」と言うんだな)「税込○○○○円(本体●●●●円)」と入れることで決着がつきました。もし次に税率が変わっても、そのスリップを取り替える最低限のコストで対応可能になるってことです。

 スリップにはそんな歴史が込められているんだな。