噂を制する者が世界を制する。

a2c_sato2004-07-13

 今日はカルチャーのゴスペル。新しい期なのに難しい曲!

「武器としてのスキャンダル」(岡留安則ちくま文庫)読了!
 http://www.esbooks.co.jp/books/detail?accd=31373637

 本作は20年前の著作とはいえ、「噂」とは何ぞや、「スキャンダル」とは何ぞや、という確信に迫った話ですので、21世紀の現在でも内容は活きてますよ。内容も読み物ではありますが、構成が「ゴシップ・スキャンダルの構造」「実践的スキャンダリズムの構造」「スキャンダルジャーナリズム論」「体験的スキャンダルジャーナリズム論」と、なんだか大学の講義みたい。
 「噂」には2種類ある、というのが興味があるな。下から上への噂と、上から下への噂。「ん、噂に上から下なんてあるの?」とお思いでしょ。ところが、これは実際にあるらしい。
 例えば、関東大震災時にあった「地震に紛れて共産党朝鮮人が井戸に毒を入れている」というもの。実際にはそんな事実はなかったものの、地震の不安に増幅されて大杉栄を代表とする共産党員や在日朝鮮人が殺害されたのだ。
 これはどうやら、その存在を快く思われていなかった当時の政府が、意図的に流した情報だと今では言われているのだそうだ。

 噂ではないものの、最近でも記者クラブで政府見解が一斉に翌日の新聞に発表されることは、政府見解を一斉に流す意図があると言えますね。
今年4月に起こったイラク民間人人質事件の「自己責任」論なんてその顕著なものなのじゃないのかな。そもそも「責任」という言葉には「自己」が含まれるし、その前年の政府官僚2人、今年のジャーナリスト2人のイラクでの殺害後に「自己責任」なんて糾した政府見解があっただろうか。

 そのへん、発言の意図や発表のタイミング、背景は考えるようにした方がよいですよ。
 別にニュースの世界だけじゃなく、仕事でも上司の話だとか、取引先の話なんかにこういう洞察は必要だし活かせるからね。