今年のベストワンブック!「文明崩壊 上・下」

こんな読みごたえがあって、ハラハラした本は久々。
 間違いなく、今年ナンバーワンの本だね!

 「文芸崩壊 上」(ジャレド・ダイヤモンド/著・草思社
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794214642
 http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31638877 
 http://www.bk1.co.jp/product/2608279
 「文明崩壊 下」
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794214650
 http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31638876
 http://www.bk1.co.jp/product/2608280 

 理系的なテーマ「環境の変化」と文系的なテーマ「社会の形成と崩壊」の両面から読むことのできる、壮大な内容です。そしてアカデミックに「古代文明が滅んだ理由」を探り、しかしそこから現代的な環境問題をジャーナリズム的に語っているのです。

 前の著作「銃・病原菌・鉄」では、歴史の「征服・被征服」を明快に論じた著者氏ですが、今回は「何故、栄華を極めた古代文明は滅んでしまったのか」を探っていきます。

 たとえば、モアイ像で有名なイースター島。調査により、西暦900年以前に6000人から30000人定住人口がおり、かつては亜熱帯で椰子の木の自生する島だったそうだ。しかし結果、モアイ像を作るために島じゅうの木を切り倒し、今では森はなくなり、先住民族も滅んだのだそうだ。残ったのはモアイ像だけ、なのだ。
 なぜあのような遺跡を作る文明があったにもかかわらず、イースター島の文明はなぜ崩壊したのか。
 古代マヤ、アメリカ中西部古文明アナサジは、グリーンランドは、どうか?
 現代はどうか?世界一人口の多い国の中国はどうか?アフリカのルワンダ内戦は?オーストラリアは?アメリモンタナ州は?

 この本で、人間の定住→農地の開発→人口増→食糧不足→農地確保のため戦争→社会の崩壊という一連の流れを見つける。
 そしてこれに長期的な環境変化、たとえば干ばつが続いたり気温が低くなったりすると、農業生産はさらに落ち込み、社会の崩壊を加速させる要因になるのだそうだ。
 そうすればどうなるか?例えばイースター島は近くに暖流が流れていないため、日本のように海洋資源に恵まず、それが文明崩壊の一因となった。
 地理的要因で、人間の環境ひいては人類の存亡にまで影響するとは。
 

 そう思うと、太平洋の孤島イースター島は、宇宙にポッカリ浮かぶ地球のように見えない?
 その島で自給自足できなければ、自然植生・動物の成長よりも、消費の速度が速ければ、人は生きていけなくなってしまうのだ。

 
 このように上巻、下巻の前半は、さまざまな文明とそれが維持できなかった理由を探り、下巻の後半は、現在の環境問題・資源問題にクローズアップしていきます。

 これから中国をはじめ、さまざまな発展途上国が先進国の経済レベルに追いつこうとする。それはとりもなおさず、資源の奪い合いになってしまう。櫛の歯が大きくなっていく可能性は大いにある。
 人類の叡智で、資源や生産・消費をコントロールしていかなければなりません。
 
 上下巻にわたる、非常に長編の内容しかも翻訳モノでサクッと読める本ではありませんが、環境問題に興味のある人、それから社会問題に興味のある人は、この本は絶対読んでほしいね。