「家庭の医学」(緑のでっかい本じゃないよ)

 今日は風呂に入りながら、レベッカ・ブラウン著「家庭の医学」を読んだ。
 
 この本を要約するとですねー、彼女の母がガンを宣告され、それから亡くなるまでの間の、彼女と母親とを切々とつづった、ノンフィクション(とあとがきには書いてあったが)の「介護文学」なんです。
 前作の「体の贈り物」はエイズ患者のホスピスを描いた小説で、彼女の淡々としながら、どこかひたむきで、力強く正面を向いた姿に感動しました。Qたろうの昨年No.1の本と言っても過言じゃありません。

 その彼女(?。ゴメン、性別良く知らん)が書いた新作だから、期待しない方がおかしいってワケなのよ。

 そしたら、ちょうど今日の朝日新聞に、この書評が高橋源一郎によって書かれてたんだけど、この書評を読んで正直なところ、いままでの彼の書評の中で、一番よかったと思った。

 なぜ良かったかといえば、「家庭の医学」では、レベッカ・ブラウンが自分の母親を看取るように、朝日の書評の高橋源一郎も、いま同じような状況に置かれた事実が書かれてあり、書評と同時にその「痛さ」も感じることができたから、なんです。
 他人の不幸をダシにして、という気がしないでもないけど、美辞麗句を並べられるよりも、身を切ったリアルさの方が、人々にモノを伝えるのに、何より、強い。

 そして、それによって何より気づかされるのは、レベッカ・ブラウン高橋源一郎だけでなく、読んでいる読者もまた同じ状況にいつかは立たされる、もしくは立たされた、という逃れられない現実、なんだよね。

 これから高齢化社会だからこのての文学はもりあがるだろう、なーんて新聞的なテーマが言いたいんでなく、「現実を捉える」というある意味冷酷な命題を、レベッカ・ブラウンは読者にいやおうなしに与える、そのリアルさ。

 あたりまえ、なんだけど、難しいよね。なかなか受け入れられないよね。

 「強さ」と「弱さ」を知ることのできる、本だと思うのです。