アトムが生まれた2003年はこんな未来だと想像してた?

 7月はお中元の季節。取引先へのあいさつであちこち電車で廻る中、移動の電車でこいつを読了!
 「あのころの未来 星新一の預言」(最相葉月/著・新潮社)
 http://www.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31123512

 「科学と未来」を世に知らしめた作家といえば、やっぱり手塚治虫大先生、ともう一人わすれちゃいけない人がいる。子供の頃夢中になって読んだ人は少なくないんじゃないかな。
 国語の教科書にもよく登場する作家、星新一氏ですよ。

 この「あのころ〜」は、科学と人間をテーマに活躍するノンフィクションライターの最相葉月氏が、サンデー毎日に連載していたエッセイの単行本。人間と科学にまつわるトピックと、星新一ショートショートの話をを織り交ぜながら、現代社会批判や、人間の面白味や哀しみをを書いています。

 しかし、臓器移植・クローン人間・ロボット・ネット社会などなど、今のこの21世紀で実現しそうなものは、すべて当時の星新一ショートショートに書かれていたんだなぁ。そして未だに彼ほどのショートショート作家も大衆SF作家も登場していないところを見ても、彼の突出ぶりがよくわかるよ。
 
 例えば今週起こった長崎の少年事件、決め手は商店街の監視カメラでした。犯罪捜査でカメラが使われるのは大いに結構なんですが、逆に言えば、自分らがその商店街で買い物をすればその姿だってバッチリ映されるワケですよ。
 「お、Qたろうまず100円ショップで雑貨を買った。しみったれてるなー。次に閉店間際のパン屋。うわ、迷い無くタイムセール半額のカレーパン買いやがったよ。お、それから古本屋だぁ?なんだ、しみったれてる割には古本はごっそり3冊買うんだ。あーこんな奴だったら新車のDM送っても買いやしないよ。」
 なんてことにもなりかねない。

 こんな可愛いことならまだしも、実際に本当に今行われていることは、おおよそ判断つきかねることばかり。人体の再生医療の研究に中絶胎児を利用するしないの議論、遺伝情報の解析で遺伝病が発見できることに対する是非、世界中すべての通信を傍受できるアメリカの「エシュロン」システムなどなど、もはや日常生活で想像することもできないことばかり。
 古びた言葉かもしれないけど、便利と危険はコインの表裏。
 
 とにかく、日頃考えない「人間と科学」を考えさせられる一冊だね。
 星新一も改めて読みたくなったし!