殺人者が刑に裁かれずあなたの傍にいるかもしれない2

 昨日の続き。

 「そして殺人者は野に放たれる」(日垣隆・新潮社)
 http://product.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31312874

 日本では精神障害殺人者のうち85%が不起訴になるのだそうだ。精神障害の判断に関する議論はともかく、殺人という結果を刑罰に反映させない日本の刑法(明治以来大がかりな改正はない)に問題があるのですね。
 もちろん殺人者の以上ぶりは、私たちには理解が不能かもしれない。しかし日本では法律の専門家が「人を5人も6人も殺すなんて尋常じゃない、精神異常だ」という判断をしてしまい、精神障害という精神科医の診察を受け、不起訴にしてしまうのだという。殺人が異常か異常じゃないかといえばそもそも異常なものだし、異常だからといって刑が軽減される、という理論はあまりにも屁理屈でしょう。
 そして、精神障害を多発していても、それらの精神障害犯罪者を受け入れる公的施設は、日本には一つもないのだ。

 そして事件として扱われなければ、ニュースとして表にならない。というよりむしろ腫れ物に触るように、マスコミは精神障害が関わるとニュースにしない。心神喪失による不起訴を不可解なものだとする、判断・思考がマスコミにはないのだという。

 そして、殺人者は野に放たれる。

 うーむ。うすら寒い。こんな事件がもしかしたら自分の身の回りで起こっていると思うと。そしてそんな問題が何もされず放置されてしまっているとなると。
 今年から大学で法科大学院が開校されましたが、法律と社会との乖離をできるだけなくすようにしなきゃね。いくら学校が最高の研究を提供したとしても、社会と結びついた法律でなければ、何の意味もないから。

 最後に、あとがきの日垣氏の最後の言葉を。

 「甚大な被害にあってから、初めて現行刑法の不条理を知る、というのは悲しい事です。
  本書が、そうならないための一助になることを祈りつつ。」
 
 オイラも祈りつつ、この本を紹介させていただきました。