人の深い悲しみを知るにはもってこいだ!「ニグロ・スピリチュアル」

a2c_sato2004-07-03

最近仕事も忙しかったのですが、こいつは頑張って読みましたぜぃ!
「ニグロ・スピリチュアル 黒人音楽のみなもと」(北村崇郎・みすず書房
http://www.esbooks.co.jp/books/detail?accd=30763149

ニグロ・スピリチュアル、とは「黒人霊歌」、ゴスペルだけでなくブルースの源流でもあるニグロスピリチュアルというジャンルの音楽のルーツを探っていくという意欲作!
著者はアメリカの歴史文化を研究している北村氏で、本作も黒人がアメリカに奴隷として強制連行された15世紀なかばから書かれます。
黒人は、強制的にアフリカ西岸から無理矢理奴隷船に連れ込まれ(劣悪な環境から航海中に死亡したり、海に投身したり)、アメリカに着いてからはお金で扱われ、日が昇る前から日が沈む後まで、毎日毎日、大規模農場で労働を強いられた。人間性なんてあったもんじゃない、
そんな苦しい生活の中でも、アフリカの宗教行事であった「リング・シャウト」という、足を摺って円を描いてみんなで踊るダンスが、彼らの唯一の拠り所だったそうである。
そこで奴隷制に反対する白人も現れ、それがを支持するのは主にキリスト教の一部の宗派だったそうだ。その過程で、黒人のうちにもキリスト教が広まり、人々は隠れキリシタンならぬ「見えない教会」(←じっさいそういう言葉があるそうなのだ)にて信仰を深めたという。
その先ほどの「リング・シャウト」とキリスト教の融合で生まれたのが「ニグロ・スピリチュアル」なのだそうだ。
とまあ、実際には内容端折ってます。歴史もこんなに簡単でもないようですが、概ねこういうことなのだそうです。

南北戦争後、黒人のためにつくられたフィクス・ジュビリー・シンガーズが、大学の財政難を救うために、1871年に、この黒人霊歌を歌い巡業に出て、アメリカ各地で絶賛されたことで、はじめて黒人霊歌が文化としてアメリカに受け入れられたのだそうだ。
記録としては、1867年に、3人の白人によって作られた「合衆国奴隷の歌」が初めてニグロスピリチュアルを明文化したものとなり、広く世に知れることとなったそうだ。

そして今では、その黒人霊歌がより宗教的になり、ポジティブに歌うジャンルを「ゴスペル」、より世俗的になり、ネガティブに歌うジャンルが「ブルース」として今につながるのです。ブルースとゴスペルはコインの裏表なのだよ。

みすず書房という歴史ある出版社だけあって、読み物というよりは研究書みたいな重厚なつくり!とはいえ図版はたくさんあるので、まだ読みやすいほうかな。巻末にある「ニグロスピリチュアル傑作選」は必見ですね。いかに黒人の奴隷時代の歌から現在のように歌が変化していったかが分かるし、なによりゴスペルのルーツがそこかしこに見られるのが楽しい!

ゴスペルはともかく、聞いた事のない人はいちどニグロスピリチュアルを聞いてごらん。すごーく心に染みわたるよ。
残念!QたろはCDは持ってないんだわぁ。そのかわり関心のある人はこの本貸すから許して!