図書館ってこんなにスリリング!

a2c_sato2004-08-17

 実家に帰省する途中、降り立った大阪・梅田のブックファースト梅田駅2階店で買いました(←この書店の位置がわかる人、けっこうディープ!)
「図書館に訊け!」(井上真琴・ちくま新書

 著者は同志社大学図書館でレファレンスを務めている氏。で、レファレンスとは何ぞや?ということなんですが。これがオモロい。
 レファレンスとは「利用者が探している資料を見つける手助けをする業務」というところでしょうか。かっこよくいうと「知の水先案内人」。
 内容は、いわゆる目録の利用術を教えたり、レファレンスブック(事典や辞書)の使用方法を教えたりと実用的な(といってもサラリーマンやOLは縁遠そうだが)内容になっていますが、いちばん興味をひくのが「実際に図書館の人に訊く」の章。
 実例をあげてレファレンスについて語っていますが、この実例が実に多種多様でオモロいんだよ。

 ・「『本朝無題詩』の中にある藤原忠通の和歌を調べたいのだが、『藤原忠通』と書かれた和歌が見つからない」
 →「昔の和歌集はよく役職名で名前が書かれている事がある。日本の歴史人物に詳しい『国史大辞典』を開くと藤原忠通は関白・摂政を務めた人。書が上手で法性寺流祖ともいわれる。ふたたび本朝無題詩に戻ると『法性寺入道殿下』という人の詩が!」
 ・「太平洋戦争終戦直前、作家の永井荷風岡山県岡山市谷崎潤一郎岡山県勝山市疎開していたらしく、8月14日に会って飲み明かし、8月15日昼前つまり玉音放送前に永井が勝山町を発って別れていることになっているが(谷崎、永井両方の著作に書いてある)、実際にそうだったのか検証したい」
 →その日に正午前に勝山駅を発つ汽車があったかどうかを調べるには、やはり時刻表。1925年から時刻表は刊行しているからそれを見ればわかる。しかし大学図書館にはない。こういうものは図書館よりも交通博物館に資料として多くあるはず。交通博物館に連絡して調べてもらうと、その日勝山駅を11時台に出たのは姫路発姫新線芸備線経由広島行き1本のみ。実際に勝山駅永井荷風は12時前に発っていた!」
 ・「『金色夜叉』の授業をするための資料で、当時これだけ流行っていた、ということを証明するために、貫一・お宮の流行歌があったはずだがそれを欲しい」
 →音楽専門の視聴覚資料を探すのもいいが、金色夜叉に関しては熱海市が詳しいはず。作品の中で貫一がお宮を足蹴にするシーンは熱海海岸でされており、地域活性化の面から熱海市が『金色夜叉』に力を入れているのだ。熱海の観光協会に連絡を取ると熱海市観光課から連絡があり、毎年行われる尾崎紅葉祭で流している金色夜叉のCDが某レコード会社から発売されている、とのこと」
 
 まるでテレビの探偵ドラマをみているみたい。さまざまな依頼者とそれを何とでも解決しようとする図書館員。気づいてるとは思うけど、図書館員は自分たちの図書館の本を案内するのでなく、依頼者のベストの解決方法に向けて資料を探すのです。図書館はあくまでもネットワークの一端ということ!
 前に「縁遠そう」と書いてみましたけど疑問を持つ→計画する→調べる→実行する→検証する→計画を見直すという循環は学校でも仕事でも同じこと。こんなレファレンスを活かすように仕事しなきゃね!