戦争を知らない世代の、戦争の本質を知る、血の流れない小説。

a2c_sato2005-03-11

水曜日に八重洲地下街の古本屋「八重洲古書館」にてゲット。1400円が900円。
 Qたろうが、久々に小説を読んだのだ!
 「となり町戦争」(三崎亜紀・集英社
 http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31474178
 集英社が主催する「すばる新人賞」を受賞した作品。小説なのだけど、今の社会を知るに興味深い一冊!

 舞坂町に住む主人公のサラリーマン。ある日家に帰ると、町の広報誌の片隅に書いてあったのは「【となり町との戦争のお知らせ】」。しかし翌日以降特に職場も環境も何かが変わった様子はない。実感が持てないまま「僕」は日々を過ごすが、次の広報誌には片隅に【死亡23人(うち戦死者12人)】という文字が・・・。確実に見えないところで繰り広げられている戦争。そして自身も町役場から「戦時特別偵察業務従事者の任命について」のお知らせが届くのだが・・・。
 
 ちょっとしたSF。筒井康隆、ほどじゃないけどシュール。「セカチュー」と共通して繊細さが滲み出てけど、戦争の漠然とした不安感を表現するに逆に効果的になってます。
 この中の戦争の本質に気付くのは簡単なようで難しい。頭で理解しても肉感がないんだもん(もちろん後半その辺にも触れています)。
 
 しかし通常の自治体の業務を「戦争」に置き換えるだけで、これだけ戦争がナンセンスに見えてしまうとはねえ。
 でも実は、それは私たちがイラクの戦況をテレビで見てることと変わりないんですよ。せいぜいガソリンが値上げされたことくらいでしか認識しないもんですから。目の前で銃弾が飛び交い、家族が戦禍に巻き込まれることもなく、テレビの画面でしか、新聞の活字の上でしか戦争を知る事ができない、その意味とは何?ということを思い知らされます。
 
 戦争という大きなテーマが最後に個人に収斂する、のは、合格点的な結果でしょうなぁ。