で、その本はどこで買ったのか?「アマゾン・ドットコムの光と影」

a2c_sato2005-05-16

 昨日一昨日の新幹線の中で読みました。前回の「アマゾンの秘密」とは好対照の本!おもしろくて一気に読んじゃったよ。
 「アマゾン・ドットコムの光と影」(横田増生・情報センター出版局)
 http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31524346
 業界紙で記者経験のある著者が、アマゾンジャパンの倉庫にておよそ半年間アルバイトとして潜り込んだルポタージュ。物流業界に長けている著者ので、潜入ルポもスパイ映画を見るようなドキドキ感。出版業界の人間なら、心躍らないはずはないですよ!
 倉庫で働くのは、ごく少数のアマゾンの社員と業務を請け負っている日通の社員が少々、そして総計400人にも及ぶアルバイト。時給は900円なのだそうだ。アルバイトの仕事は、ひたすらシステム化された単純作業。体育館6個分の倉庫にある本棚から、プリントアウトされたリストの本を探すという、至極単純な仕事。しかし1分に3冊の本をピックアップするという暗黙のノルマが存在し、そのノルマがアルバイトを見えない鎖で拘束する。働くアルバイトも、アマゾンという会社に興味があって働いているわけではなく、アルバイトの中でアマゾンを利用した人は一人もいなかったそうだ。
 話は書籍ネット販売という業界話からニューエコノミーの労働現状へも広がり、登場する「島崎さん」に胸を痛めてしまいます。しかしこれがパソコンの画面の「便利さ」の裏にある事実なんだよなぁ。言葉は悪いが「南北問題」と変わりないぞ。

 また潜入ルポにとどまらず、アマゾンの株価などデータからも分析しており、証券アナリスト氏の話は特に明確で、アマゾンの収益構造を明確に語っておりました、特にマーケットプレイスの利益の出し方については目からウロコ!元となる資本を必要としない手数料ビジネスに移行している、か。なるほど。

 ◆(ここからは業界の人は必見!興味のない人はとばしてください)◆
 注文データは一度シアトルを経由するのだそうだ。つまり世界中の書籍購買のデータが集まるってことか!世界戦略をハナから視野に入れているのね・・・。
 取次との関係にも大阪屋から日販にシフトしているねは知らなかった!2000年のアマゾンジャパン開始時の実情が、細かに書かれています。契約には卸値に話が及ばないはずはないから、興味津々どころか凝視状態ですわ。あ、「大阪屋のアマゾン実務担当者」って書いてるけどオイラ知ってる人だたぶん・・・。アマゾンとの関係について大阪屋の広報がなしのつぶてだったと書いてあるけど、これは、広報課はありますが課員は課長1人だけだからだと思います。
 著者が実際に働いて得た情報と既存のデータをかけあわせて算出したアマゾンの年間売上は500億!これは紀伊國屋丸善の1000億に次ぎ、文教堂有隣堂に並ぶ数字だよ!アマゾンは今まで売上高を公表してなかったことを考えれば、この情報はデカい。
 アマゾンにブックオフの取引コード!ホンマか?!
 氏は直取引を「出版業界のタブー」と書いているが、出版社と書店の販売戦略がしっかりしていればそもそも可能なわけで、必要以上に畏怖したり敵視したりすることはないと思われるけどね。事実トランスビューという出版社は直取引ながらベストセラーを輩出しているし、紀伊國屋も専用の窓口をおいて約100社と直取引を行ってるし。
 データの蓄積によってアマゾンの直取引が可能になりそれがアマゾンの立場を高くすることになる。開業して数年のネット書店が、100年以上もの老舗を駆逐していくのは、黒船以上ですぞ。 
 ◆(以上、出版業界人の驚嘆の叫びおわり)◆

 アマゾンの驚異的な成長と、しかしとその一方で磨耗されるアルバイトの二極化。前に読んだ山田昌弘氏の「希望格差社会」の 具体例でもある。「共生社会」という言葉がカラカラ回る音がしますよ。

 で、今日の本題。
 
 この本はどこで買ったって?そりゃアマゾンのマーケットプレイスだよ。文句あっか!!