首輪爆弾銀行強盗事件 その3

マージョリーの弁護士が犯人と目した人物は、ウィリアム・ロス・ステイン。男性。60歳。職業は電気配線工。
近所では「発明おじさん」として有名であったものの、一方ではちょっとしたマッドサイエンティストだったらしい。

実は銀行強盗事件のとき、首輪爆弾以外にも細工をほどこしたツールがあったのだ。
例えば、ブライアンが銀行強盗時に利用した銃は、仕込み銃だった。いわゆる紳士が持つようなステッキの中に銃を仕込んであったのだ。
こんな人物であるなら首輪爆弾をつくることもたやすいだろう。


そして、マージョリーとの関連はと言うと、前に登場した大型冷凍庫。
この大型冷蔵庫をつくったのが、何とこのウィリアムだった。

しかし弁護士が調べるうちに、ここからまたマージョリーとウィリアムとの屈折した人間関係があらわとなる。


マージョリーの逮捕。内縁の夫の死体遺棄を警察に通報したのは、実はウィリアムだったのだ。
しかも、最初の夫、それから冷凍しようとした夫、2人とも紹介したのもウィリアムなのだ。

そしてもっと恐ろしいことも判明した。
ウィリアムと銀行強盗をしたブライアンは、なんと既知の関係だったのだ。
つまり、首輪は強制的にはめられたわけではない、とも考えられるのだ。相手を知っての上で、首輪爆弾をはめたのだ。
ブライアンに首輪をはめて、そのあとで「これは爆弾が仕組まれてある」と言ったとしか考えられないということだ。
顔見知りの人間に時限爆弾を仕込ませ、銀行強盗を強要させるとしたら、尋常の神経じゃない。


そのブライアン事件の核心であるウィリアムはどこにいたかというと。。。


マージョリーの逮捕された翌年に病死しているのだ。



結局、またしても真相は闇の中

ウィリアムがブライアン事件の犯人である確たる証拠はまだ見つかっていないが、数々の証拠からウィリアムの人物像が浮かび上がった。

例えば、幼女強姦魔を匿っていたことがわかった。彼に食事を与え、街に放っていたというのだ。
もはや人間のやることではない。首輪爆弾の経緯も考えれば、悪魔としか言いようがない。

したがって、ブライアンの銀行強盗に関しても、銀行強盗させること自体が目的だったのではないか、と考えられるのだ。
なぜなら銀行強盗した額は日本円で90万円ほどだったらしい。いかんせんペンシルバニアの小都市であったので、それくらいしか銀行には現金はなかったのだろう。
本当に強盗で金が目的なら、もっと智恵の働かせ方があるだろう。

次々と浮かび上がってくるウィリアムの人物像。
人を操って悪を働かせる、映画以上に冷酷で非道な人間。

現在、マージョリーは「銀行強盗計画はウィリアムにやらされた」と弁護士をとおして主張しているという。
たしかにこの状況だとマージョリーは銀行強盗に関与していないし、ウィリアムがこの世にいないのなら、マージョリーは自分の無罪を主張し続けるだろう。




映画を越える現実。

ウソではありません。アメリカで本当にあった事件です。